相続(税)対策で生命保険(特に死亡保障のあるもの)がよく用いられることがあります。主に次のようなメリットがあり、相続と生命保険の相性は抜群と言えます。
・手続きが簡単(他の財産と比べて)
・約1週間程度でお金が入る
・節税になる 等
しかし、掛け方を間違えたり、見直しをしていなかったりすると、そのようなメリットを享受できないことになります。
今回は、相続対策の観点からの、生命保険の見直しチェックポイントについてお話したいと思います。
1.被保険者を自分以外にしていませんか?
次のような保険契約だと、2つの問題点が考えられます。
|
No.
|
契約者
|
被保険者
|
受取人
|
|
1
|
父
|
母
|
父
|
|
2
|
父
|
母
|
子ども
|
1つ目は、父が先に亡くなった場合です。
この場合、保険の対象である被保険者の母は亡くなっていないので、保険金が降りることはありません。
「生命保険契約に関する権利」といって、父が亡くなった日に解約したと仮定した場合の解約返戻金相当額を父の財産として計上する必要があります(保険会社に預けている預金のようなイメージを持ってもらえれば良いかと思います)。
これに該当すると、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の人数)が適用されず、また遺産分割協議の対象になり、手続きが面倒になります。
「すぐにお金が入り、節税になり、手続きもスムーズ」という、相続における生命保険のメリットをいずれも享受できないことになります。
2つ目は、母が先に亡くなった場合です。
この場合は、どちらも相続税以外の税目の課税対象になります。
No.1の場合は、所得税の課税対象になります。父が自分で保険料を払って、自分で保険金をもらうためです(色んな控除があるので、税金はそこまで大きくなりにくいですが)。
No.2の場合は、贈与税の課税対象になります。父が払ってきたお金を、その父が存命のうちに子どもが保険金としてもらうためです。こちらの場合は、税金が多くなる傾向にあるので、特に注意が必要です。
もし見直したい場合は、被保険者の変更は通常認められないため、一度解約して、入り直す必要がありますが、解約時にも所得税が課税される可能性があり(上のNo.1と同じイメージ)、また解約のタイミングによっては元本割れの可能性もあります。
2.受取人が亡くなっていませんか?
保険金の受取人が先に亡くなっており、受取人を変更しないまま保険契約者兼被保険者が亡くなると、その保険金は一般的には「受取人の法定相続人」が受け取ることになります(保険会社によって扱いが少し違う場合もありますが)。
その「受取人の法定相続人」に受け取ってもらっていいなら、そのままでも良いのですが、自分の意図しない人に保険金が渡る可能性があるなら、受取人変更の手続きをしましょう。
なお、そのままでも良い場合でも、「受取人の法定相続人」が受け取ろうとするなら、手続きの際に追加の戸籍が必要となることがあり、手続きが少し面倒になりますので、やはり受取人変更はしておいた方が無難です。
3.受取人を孫にしていませんか?
子どもが先に亡くなっておらず、かつ孫を養子にしていない場合、孫は相続人には該当しません。
相続人に該当しない人が死亡保険金を受け取ると、次の2つの問題が生じます。
①死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の人数)が適用されない。
②相続税の申告が必要になる可能性があり、しかも相続税が通常の2割増しとなる。
良かれと思って孫を受取人にしていると、後で余計な税金を支払わなければならないかもしれません。
4.争族対策の仕方間違えていませんか?
生命保険は、争族(相続で揉めること)対策に用いられることもあります。
ただ、その受取人を間違えると、その意図が結果に反映されないことになります。
例えば、父が不動産を長男に、お金を二男に、それぞれ残してあげたい場合について考えてみます(財産はこれだけで、遺言書は作成していないものとします)。
この場合に、父が二男を受取人とする保険に入り、亡くなったとします。
そうすると、二男は財産(保険金)を取得できたから、もう揉めないかと言うと、残念ながらそうはなりません。
二男が受け取る死亡保険金は、相続税の課税対象にはなりますが(非課税枠を超えた部分で)、民法上は父の財産ではなく、受取人(二男)自身の財産という扱いになります。
そのため、この状態だと二男は父から財産をもらってないことになりますので、このことを二男が知っていると「親父の財産(不動産)を兄貴(長男)と俺(二男)とで半々に分けよう」という話になり、父の意図しない結果となってしまいます。
この事例の場合どうすればよかったかというと、保険金の受取人も長男にすることです。
こうすると、長男は不動産も保険金も取得して、その代わり長男は二男に対して、受け取った保険金を原資に、「代償分割金」を渡すことで公平に財産を分け合うことが可能になります。